ブレーキフルード(Brake Fluid)は、安全な運転のためにメンテナンスが欠かせないオイルです。
このオイルは劣化するため、交換が適時必要となることが理由です。
例えば、自動車を車検にだしたときなど、
「ブレーキフルード、交換する時期ですよ」などと言われたことがあるかもしれませんね。
この交換時期とは、どのように見極めるのでしょう。
- 走行距離?
- ブレーキフルードの量?
- 費用はいくらかかるの?
こんな疑問を持つ方がいらっしゃるかもしれません。
この記事では、そんな疑問にお答えします。
チェック方法の紹介、そして正確な判断ができるようにブレーキフルードの交換時期の解説をしましょう。
愛車にとって重要なメンテナンスですので、ぜひご参考にしてください。
ブレーキフルードとはどんなオイル?
ブレーキフルードと聞くと、エンジンオイルと混同される方がいるかもしれません。
エンジンオイルはブレーキフルードとはまったく別のもので、エンジンに使用するためのオイルです。
エンジン内の各所に行き渡らせることでエンジンを長くベストなコンディションに保つ役割を持ちます。
さて、ブレーキオイルとも呼ばれるブレーキフルード。
フルード(fluid)は、一般的に液体や水分に加えて”滑らかな”という意味を持っています。
ブレーキフルードはエンジンルーム内にある「リザーバータンク」と呼ばれるタンクに入っていて、ブレーキキャリパー内のピストンを押し出すための作動油を指します。
ブレーキフルードの規格
ブレーキフルードには、アメリカ運輸省が定める自動車の安全基準であるFMVSS、日本の工業規格であるJISという2つの規格があります。
FMVSSにはDOT3, DOT4, DOT5, DOT5.1があり、JISはアメリカのDOT規格に準拠したものになっています。
DOTとは、Department of Transportationの略で米国運輸省です。
ブレーキとブレーキフルードの関係
ブレーキフルードはいわゆるオイルで、ブレーキが正常に作動するための制動力を伝える重要な役割を持っています。
ブレーキフルードのメンテナンス次第で、車の安全運転に大きく関わってくると言えるほどです。
まず、ブレーキとブレーキフルードの関係について簡単に触れていきましょう。
一般的な自動車には「油圧式ブレーキ」が採用されています。
走行中にスピードを落とす、または車を停止させるためのブレーキですが、それはブレーキペダルを踏むという行為によって行なわれます。
さて少しテクニカルな話しになりますが、ブレーキペダルを踏むと、ブレーキキャリパー内にあるピストンが押しだされます。
すると、ブレーキパッドがブレーキローターに押しつけられることによってスピード減速、停止のための制動力を得ることになります。
この制動力を伝えるためのオイルがブレーキフルードです。
このように、ブレーキとブレーキフルードは切ってもきれない関係だということが言えるのです。
ゆえに、安全を考えるときには正常に働く状態こそが外せないものとなります。
ところがブレーキフルードは劣化するオイルであり、性能が悪くなるとブレーキが正常に働かなくなるトラブルが起こることがあり大変危険です。
ブレーキフルードはなぜ劣化するのか?
ブレーキフルードが劣化する理由は大きく分けて2つあります。
①熱による劣化
車の走行中にブレーキが高温になると、その摩擦熱がブレーキフルードにも伝わります。
その熱によってブレーキフルード劣化が進んでしまうのです。
ベーパーロック現象
古いブレーキオイルを使い続けると、ちりやホコリ、不純物などが混じりオイルの沸点が下がってしまうことがあります。
ブレーキオイルが沸騰すると、ペダルを踏んでもブレーキが効きにくくなる「ベーパーロック現象」が起こることがあります。
ブレーキのトラブルは大変危険ですので、日頃から点検することを心がけましょう。
②水分による劣化
ブレーキフルードに含まれるグリコール・エーテルという成分があります。
主成分となっているこの成分には、水分・湿気を吸収しやすい特徴があるため、時間の経過とともにブレーキフルードの劣化が進みます。
ブレーキフルードの交換時期を見極める4つの方法
ここからはブレーキフルードの交換時期の目安を紹介します。
①ブレーキを踏み込むときの感覚でチェック
ブレーキを踏んだとき、踏み心地が安定していないなどの違和感があることがあります。
または踏み込んでいるのにフワフワとスポンジを踏んでいるかのような感覚を持つことがあります。
先ほど紹介した「ペーパーロック現象」は、熱によってブレーキフルードが沸騰することで配管内に気泡が発生してしまい、ブレーキが効きにくくなる現象ですが、この状態はブレーキフルードが劣化した大きなサインです。
特に「ブレーキペダルを踏み込むとスコンと抜けて床についてしまう」ような症状がある場合は、運転をすぐにでも止めるべきサインです。
この状態はブレーキがまったく効いていないということになります。
このように、ブレーキを踏み込んだときの感覚からブレーキフルードの劣化を見極めることができます。
②ブレーキフルードの色をチェック
ブレーキフルードの交換時期を判断するために、とても分かりやすい方法があります。
それが「オイルの色を見る」というものです。
ブレーキフルードは劣化とともにその色が変化します。
以下、詳しく説明していきましょう。
新しいブレーキフルードはほぼ透明に近い、非常に薄い黄色をしています。
劣化が進むと、この色に変化が生まれます。
まず、透き通ってはいるものの薄い茶色に変色し、その後は濁りがでてきたり、茶色が濃くなっていきます。
最後には黒っぽい色にまで変色し、こうなると、運転が危険になるレベルです。
ブレーキフルードはエンジンルーム内にある「リザーバータンク」と呼ばれるタンクに入っています。
ブレーキフルードの交換はできれば薄い茶色のうちに、黒っぽい色まで変色していたら即時、交換をすべき段階だということを覚えておきましょう。
③リザーバータンク内のブレーキフルード量をチェック
リザーバータンクにはMAX(上限)とMIN(加減)という表示があります。
ブレーキフルードの液面がMINに近かったり低い場合は交換時期ということになります。
また、減少が著しい状態では絶対に運転をしないようにします。
④走行距離や使用期間の目安
ブレーキフルードを交換する目安となる走行距離は、およそ1万Kmとされています。
使用時期で考えると1年程度で交換することをお勧めします。
前回の交換時から2万Km、2年など経過することでブレーキの故障のリスクが高まります。
適度に交換するようにしましょう。
ブレーキフルードの交換費用と交換場所
では、ブレーキフルードの交換はどこでするのでしょうか?交換する場所によって費用が異なります。
- 自動車メーカーの正規取扱店ディーラー
- ガソリンスタンド
- 大手カー用品総合専門店
- 整備工場
ブレーキフルード交換の相場目安は10,000円前後です。
この内訳としては、ブレーキフルード代3,000円~5,000円程度(1リットル)に工賃の相場4,000円~5,500円が加算されています。
これはあくまでも相場です。
ディーラーで交換をする場合、その工賃が高くなることから交換費用も高くなる傾向がありますが、街の小さな整備工場では5,000円程度で行なっている店舗もあります。
交換場所や車種によって工賃が違ってくることを頭に置いておくことが大切です。
ブレーキフルードにはDOT3, DOT4, DOT5といった種類がありますが、交換の費用が安い店舗はこのなかから料金の安いDOT3を使用している場合があります。
いろいろな条件が重なって費用が決まりますので、交換を依頼する店舗を決めたら金額の確認をすることをおすすめします。
交換にかかる時間ですが、実際の作業の目安は30分程度をみればよいでしょう。
ブレーキフルードの交換時期を逃さないためにできること
ブレーキフルードの交換を忘れてしまうと、重大な事故が起こる可能性があるため、定期的にチェックや交換をすることが大切です。
- ブレーキフルードの色や量を日常的に点検する
- 運転時のブレーキ踏み込みの違和感を見逃さない
- 車検時にブレーキフルードの交換をする習慣をつける
車検時に交換する習慣をつける
「車検」を受けるときに毎回、ブレーキフルードの交換依頼する習慣をつけていると忘れることが無く安心です。
車検は、普通車や軽自動車の場合は2年ごと(新車は初回のみ3年)です。
最低2年に一度、ブレーキフルードの交換をすれば、オイルの劣化による危険を回避するとともに、車検とオイル交換をまとめてすることでコストを節約できる場合があります。
ディーラーやカー用品店舗など車検をする業者から、オイルの交換を声がけされることもあります。
車検時に交換すると割引きがある
車検時にブレーキフルードの交換を同時にすると割引きを受けられるお店もあります。
ブレーキフルードを劣化したままで運転をすると大変危険です。
車検と同時の交換は必須ではありませんが、このような値引きを念頭に置くことは安全面とコスト削減にメリットがあるでしょう。
さて、ここまではブレーキフルード交換のできる場所とその費用についての説明でした。
しかし、ブレーキフルードは自分で交換することも可能です。
ブレーキフルードを自分で交換する方法と費用は?
ドライバーのなかには、ブレーキフルードを「自分で交換するなんて無理」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、しっかりとリサーチをして準備をすると思いの外、簡単だという声も聞かれます。
交換のやり方については、YouTubeなどで検索すると多くあります。
とは言え、交通事故につながる危険を避けるために、リザーバータンクを空っぽにしないよう古いブレーキフルードを抜き取るといった注意点などをはっきりと伝える動画を選ぶことが必要です。
なおかつ、未経験者は経験者の立ち会いのもとで、まずは数回行なってみることをおすすめします。
さて、用意するブレーキフルードですが選ぶ際に気をつけたいポイントがあります。
ブレーキフルードを規格で選ぶ
上述したとおり、ブレーキフルードにはアメリカ運輸省が定める自動車の安全基準であるFMVSS、日本の工業規格であるJISという2つの規格があります。
規格に準拠していない商品はDOTと書くことができません。
DOT3, DOT4, DOT5のなかで、一般的な車ならDOT3、高速道路や山道をよく利用するならDOT4など、ベストなブレーキフルードを選びましょう。
この情報は、自動車の取扱い説明書を確認すると規格が記載されています。
ブレーキフルードをメーカーで選ぶ
ブレーキフルードには、国産純正ブランドなどいくつかのメーカーがあります。
人気のブレーキフルードとして、エンドレス「高性能ブレーキフルードRF650」、古河薬品工業「ブレーキフルードBF-3」、カストロール「ブレーキフルードReactパフォーマンスDOT4」などが挙がります。
これらの商品の価格は800円~4,400円と幅広くあり、Amazonや楽天市場で購入することができます。
その際に、古いブレーキフルードを抜くためのポンプも合わせて買うと便利でしょう。
なお、容量についても必要量を把握します。
ほとんどの車は500mlで足りますが、車種によっては1000mlを必要とする場合があります。
オイルの劣化を避けるために、残ったものは次回に使わず毎回新しいブレーキフルードを買うようにしましょう。
ブレーキフルードの交換時期と費用のまとめ
ブレーキフルードの劣化によってブレーキが効かなくなり、最悪は重大な事故につながるケースがあります。
このために、交換時期を見逃さずにメンテナンスすることが重要になります。
一般的な交換時期は1年~2年、車検の機会にブレーキフルードも交換するようにすることがおすすめです。
しかし、ブレーキを踏み込むときの感覚がおかしい、ブレーキフルード色の変色が進んでいるようだ、量が減っているなどの状態を見つけたらすぐにでもプロに相談し、交換をするようにしてください。
ディーラーなど依頼先にもよりますが、交換にかかる費用は約5,000円~10,000円前後。このコストにはブレーキフルードと工賃が含まれます。工賃を節約するために、自分で交換することも可能です。
なお、ブレーキフルードの交換時期には見極める方法があります。
しっかりとしたメンテナンスを行ない、快適で安全なドライブを楽しみましょう。