運転免許を取得する条件のひとつに「視力」があります。
基準に達しない視力では自動車学校に入校することができません。
免許更新の際にも視力検査があり、規定の条件に達しないと不合格となります。
当然、更新も完了させることができませんし、合格するまで再検査を受けることになります。
運転の知識や技術を学ぶため学科や実技は必須ですが、視力についてもその重要性を軽視するわけにはいかないのです。
そこで本記事では、なぜ視力の基準が設定されているのか、視力検査とはどのような検査なのか、免許の種類ごとの視力条件、検査に不合格になったらどうすべきかなど、様々な角度から解説をします。
免許と視力は切り離せないものであることを理解し、一発合格できるようご参考にしてください。
なぜ、視力の基準が設定されるのか?
免許を取得し運転するには、基準に達した視力が必要です。この視力によって以下を認識できます。
- 信号の判断
- 数々の道路標識を確実に見る
- 前方の車との距離を見定める
- 歩行者や自転車などを認識する
- 道路に障害物があれば見落とさない
視力には静止視力と動体視力があります。静止視力は止まった状態の物を見るときの視力に対し、動体視力とは動いている物を見る視力、または動きながら見るときの視力です。
車の運転には動体視力が必要で、動体視力が低いと交通事故につながるリスクがあります。
安全運転とは当然、ドライバー本人そして他者にも関わる最も大切な運転の基本です。相応の視力は安全運転のために欠かせないということは誰もが納得することでしょう。
視力検査とはどんな検査?
さて、実際にどのような検査で視力をチェックするのかみていきましょう。
事前に内容を知ることで緊張感なく受けることができます。
ランドルト環検査
運転免許の取得のために行なわれる一般的な検査です。
ランドルト環検査は「C」に似たマークの切れ目が上下・右左・斜めのどの方向にあるのか答えていく検査です。検査表には太くて大きいCから、細くて小さいものが並べてあり、5メートルほど離れたところからそれらを読んでいきます。
なお、読むときは黒いおたまのようなもので片目を覆います。そして、どのCマークの切れ目まで見えるかによって、視力を判定します。
メガネやコンタクトレンズを作る際、眼科でこの検査を受けた方も多いのではないでしょうか?
深視力の検査
大型、中型免許やけん引免許などの取得の際には、深視力の検査という検査も受けることになります。
深視力の検査とは物を見るときの遠近感と立体感について検査し、単純に物が見えるかというランドルト環検査とはまったく異なる検査です。
用意された箱のなかには3本の棒が水平に並んでおり、検査を受ける人はそれを2.5メートル離れた場所から覗きます。
真ん中の棒だけが前後に動くので、また水平になったと思うタイミングでボタンを押します。
これを3回繰り返します。
これを三桿法(さんかんほう)と呼び、動いた棒と他の2の誤差が平均2cm以内であれば合格です。
遠近感をつかむことが難しい人は視力がとても良くても合格できないケースがあります。
免許の種類ごとに違う視力条件
それでは、どの程度の視力があれば合格なのか確認しましょう。
ポイントは免許の種類によって合格の基準が異なるところです。
なお、検査には眼鏡やコンタクトが使用できます。
普通第一種免許・中型第一種免許(8トン限定中型)・準中型第一種免許(5トン限定準中型)・大型特殊免許・二輪免許・普通仮免許
→「両眼で0.7以上」かつ「一眼でそれぞれが0.3以上」
→一眼が0.3に満たない場合、または片眼が見えない人はもう片方の眼の視野が左右150度以上、かつ、視力は0.7以上
大型第一種免許・中型第一種免許(限定なし)・準中型第一種免許(限定なし)・けん引き免許・第二種免許・大型仮免許・準中型仮免許
→「両眼で0.8以上」かつ「一眼でそれぞれが0.5以上」
原付免許・小型特殊免許
→「両眼で0.5以上」
→片眼が見えない人はもう片方の眼の視野が左右150°以上、かつ、視力は0.5以上
※左右視野150°の意味とは
正面を見たときに自分から見た前方を0°とし、そこから左右に75°ずつの角度までの範囲を指し、この範囲にある物が見えるときに視野が150°と言います。
視力検査がある前は、体調管理に気をつけましょう。
前日はゆっくり入浴をする、首回りを温める、良質な睡眠を得るなど、自律神経を整えるように心がけます。
また、深夜までスマホなどを使って目を疲れさせないようにすることも大切です。
視力検査で不合格になってしまったら?
視力検査に不合格になってしまった場合
- 時間をおいて、当日のうちに再度検査を受ける
- 日にちを変えて、再度検査を受ける
このようにして再検査を受けることが可能です。
1日のどの時間帯に検査を受けるかによっても視力は変化します。
検査官や地域によっては、3回程度やり直しをさせてくれることもあるようです。
再度受けることで合格する可能性はあります。
それでも合格できない場合は、視力矯正を考えなければいけません。
視力矯正は一般的に眼鏡やコンタクトレンズの着用です。
普段から視力矯正を必要としていて、眼鏡やコンタクトレンズを使用している人で不合格になるようであれば、その度数が合わなくなっていることも考え、眼科や眼鏡店などで視力のチェックを受けましょう。
しかし不合格とならないためには、視力検査があると分かった時点で事前に視力チェックをすることをおすすめします。その際は運転免許のための視力検査または深視力の検査があることを伝え、度数などのアドバイスをもらいましょう。
視覚検査の不合格で運転免許証の失効にはご注意
免許証の有効期限内に視力検査に合格しないと、運転免許証が失効となってしまいます。
再検査を受けるときにはこの点について十分注意してください。
運転免許の効力がなくなってしまった場合、失効から半年以内であれば通常の更新と同じように手続きをすることはできます。
最善の方法としては、眼科や眼鏡店などで視力のチェックを事前に行ない、免許取得の視力検査がやり直しにならないようにすることです。そうすれば、多くのケースで視力のために検査に不合格、免許の失効となることを避けられるでしょう。
裸眼で運転すると道路交通法に違反になるケース
眼鏡やコンタクトレンズなどを使用して視力検査に合格すると、免許証に「眼鏡等」という条件が記載されます。
この条件がある人が裸眼で運転すると道路交通法第91条違反となりますので注意ください。
違反をすると2点減点プラス5,000円~9,000円の罰金(車の種類により異なる)が発生します。
この状態で事故を起こしてしまえば、自動車保険の支払いも減額となります。
レーシック手術を受け視力が回復する場合があります。
このときは最寄りの免許センターまたは警察署で再度検査を受けた上で、「限定解除」の手続きが必須です。
老眼が進むことで遠方視力(遠くの視力)が回復する場合もあります。
その場合は、メガネやコンタクトレンズ無しで視力検査をし、合格することで免許証に書かれる条件が緩和されます。
緑内障=NGでないけれど、、、
視覚障害のなかに緑内障があります。眼圧の上昇などで視野が狭くなってしまう病気です。
2019年2月6日に行なわれた「視野障害と交通事故」という国土交通省事故防止セミナーがあります。
ここから緑内障に関する情報を少し紹介をしましょう。
「びっくり箱現象」
- 突然、車や自転車が目の前に飛び出してきた(または目の前から消えたことがある)。
- 普段あるはずの一時停止の標識がなくなっていたことがある。
- 交差点にあるはずの信号機がなくなっていたことがある。
こんなときは、視野に異常があるかもしれません。気になる方は、検査を受けることをおすすめします。
これは怖いですね。自動車事故を起こした高齢運転者の緑内障罹患率が3.6倍というデータがあるようです。
このように視野に障害を持つ人でも、中深視力が良好であれば検査に合格します。
過信することなく、物の見え方に少しでも異常を感じたら眼科でチェックをする必要があります。
運転免許取得に必要な聴覚
運転免許取得には、視力以外にも聴覚の基準も設けられています。
聴覚の基準は「両耳の聴力が10メートルの距離で、90デシベルの警音器の音(補聴器使用可)が聞こえること」とされています。
ただし、補聴器などを使用しても基準に満たない聴覚障害や難聴の方でも、運転免許センターで臨時適性検査(実車)を受けることにより、条件付きで運転免許を取得・更新する事ができます。
臨時適性検査は予約制のところがほとんどですので、居住地の運転免許センターに問い合わせてください。
運転免許の視力検査まとめ
免許取得に必ず受ける視力検査には、ランドルト環検査と深視力の検査があり、安全運転のために設定された合格の条件があります。
事前に眼科や眼鏡店などで視力のチェックをすれば、検査当日のやり直しが避けられます。また、視力は変わっていくことがありますので、定期的に、また異常を感じたときに即チェックをするよう心がけましょう。
視力検査以外にも、運転免許を取得する場合は聴覚検査や適性検査などあります。
それぞれの検査は安全運転に大きくつながるものですので、しっかりと受けるようにしてくださいね。