車を所有する人は税金を納付する義務があります。
ところで、税を払い忘れたらどうなるでしょう?または、納付の期限を過ぎて滞納してしまったら?
この記事では、車の税金の払い忘れや滞納をするとどのようなことが起こるのか解説します。延滞金が発生するまでのプロセス、車検との関係、また経済的に事情がある場合の手続きについてなども詳しく紹介しましょう。
車の税金4種
車を所有すると、消費税の他に3つの税金が発生します。車に関する税金は以下の4種類です。
- 自動車税/軽自動車税
- 自動車重量税
- 環境性能割
- 消費税
自動車重量税は車検時、環境性能割および消費税は車を購入時に支払いが発生します。これらと比べ、自動車税/軽自動車税は年に一度、納税通知書を受け取る車の所有者が自ら支払う税金です。
納付という行動を自らが起こさなければならない自動車税/軽自動車税はうっかりと払い忘れをしたり、高いためについ滞納してしまうことがあります。
ここからは、自動車税について話しを進めていきましょう。
自動車税を払い忘れてしまった!
毎年4月1日、この時点での車の所有者に課税される自動車税。
5月初旬に所有者宛に送付される納税通知書をもとに、5月末(都道府県によっては6月)までに一括の納付が義務づけられています。
自動車税を金融機関の口座振替から自動的に引き落とされるようにしている人がいる反面、年に一度の納税ということで納税通知書が来てから金融機関へ直接納めに行く人も多くいます。
ところが、多忙な生活を送る現代人は納付のために銀行へ行く時間を後回しにしてしまったり、そのうち納税通知書を紛失してしまうという事態に見舞われることがあります。納税通知書を紛失したことさえ気づかないこともあり、そうなると後になって「自動車税、払うのを忘れてしまった!」ということになってしまうことも。
車の税金は気軽に払い忘れていい性質のものではありません。納税の義務については憲法にも明記されているほど重要なものだからです。
納税通知書の扱いが大切であるとともに、こういった意識を持つことも重要と言えます。
しかし、払い忘れや事情があって納付が難しいことも現実にはあります。
このようなケースでは段階別に延滞金が発生したり、差し押さえという大きなトラブルに発展していってしまいます。
自動車税の滞納、払わないと何が起こる?
うっかりミスの払い忘れでも事情がある故の滞納でも、納税をしない限り滞納者には行政処分が行なわれます。
すぐに気づくことができればそれほど心配する必要はありませんが、どのような行政処分が発生するか知ることによって納税の意識が高まります。
さて、行政処分にはいくつかの段階があります。
- 納税通知書に記載の納付期限翌日から延滞金が発生
- 督促状の送付
- 催告状の送付
- 差し押さえの通知の送付
- 銀行口座の差し押さえ
- 車や家など財産の差し押さえ
それでは、ひとつずつみていきましょう。
- 納税通知書に記載の納付期限翌日から発生する延滞金
延滞金とは、各種の税金を滞納したときに課される公法上の徴収金です。徴収金は本来の納税額に対し、決められた金利から日割り計算の額を算出、納付期限から支払いを行なった日までの日数分を乗じたもになります。延滞金利率は毎年変更になること、納付期限の翌日から1ケ月間(2%台)、2ケ月目以降(8%台)で上がることを抑えておきましょう。
- 督促状の送付
督促とは「義務や約束を果たすように急き立てる」と言った意味を持ちます。期限までに実行されていない事がらについてその履行を促します。
自動車税未納付に対する督促状は7月上旬をめどに送付されます。 - 催告状の送付
督促状を受け取っても納付をしない場合、次の段階として催告状が送付されます。督促状と比べ、催告状は内容が厳しくなります。「納めない場合、財産を差し押さえる」といった具体的なもので、さらに法的手段の可能性も述べられており無視することはできません。
催告状は9月頃に送付されます。この時点で、納付期限から3ケ月以上が経過していることになります。 - 差し押さえの通知の送付
次の段階では、いよいよ差し押さえに関する通知が送付されます。この通知を送付するということは納税者の財産調査が終わって差し押さえをできる状態という意味になります。実行に移る前の最後の通告と考えましょう。深刻な状態ということが分かるように、都道府県によっては封筒が赤色もしくは黄色になっています。 - 銀行口座の差し押さえ
差し押さえ通知には「○月△日までに支払いが確認されない場合には差し押さえを実行します」と具体的な日付が記載されています。この期日までに支払わないでいると銀行口座が差し押さえられます。
差し押さえは通知送付から5ケ月以上経つと始まります。
なお、生活のため口座の全額ではく、給与の4分の1までの額が差し押さえられます。 - 現金以外、車や家など財産の差し押さえ
自動車税を滞納する人で銀行口座にお金がない場合は、代わりに車、家などの財産が差し押さえられます。車が差し押さえされる場合、高級車など資産的価値が高い車に限定されます。これも、差し押さえは生活を困窮させるものであるべきではないという考えがあるからです。
他にも、生命保険や株式といった金融商品や貴金属品といったものまで差し押さえられることもあります。
財産の差し押さえについて
納税者の所轄税務署に徴収職員という職員がいます。これらの職員は滞納処分のための財産の調査を行なうことができます。
調査後、自宅に役所の担当者が訪れ、滞納者へ差し押さえ書を渡し、現物を差し押さえます。車であれば、タイヤにロックをかけられ滞納者が利用できないようします。
差し押さえられる財産は、あくまでも滞納している金額分(自動車税+延滞税)のみです。また、滞納者とその家族が生活するための3ケ月分の食料などは差し押さえすることができない決まりがあります。
差し押さえられた財産は売却され、県税などに充てられます。
なお、差し押さえについて妨害したり抵抗する行為があると刑罰を受けることになってしまいます。
財産を隠したり、破損させたりして価値を低くする行為、命令に抵抗する行為が認められると、3年以下の懲役、250万円の罰金などの刑罰が課せられます。
税の滞納に関しては、真剣に考える必要があることがお分かりいただけたのではないでしょうか?
滞納整理強化期間とは?
各都道府県では「滞納は絶対に見逃さない!」という滞納整理強化期間を設けることがあります。自動車税徴収率は全国でばらつきがありますが、低い位置にいるところほどこのようなキャンペーンをするようです。
ひとつ、千葉県を例として紹介しましょう。
以下は、平成30年10月5日付けの千葉県総務部税務課のお知らせです。
- 対策の概要
(1)「差押処分『四段構え』作戦」の実施
今年度に課税した自動車税の年度内徴収を徹底するため、給与・預貯金・生命保険・自動車の順に4段階で差押えを行う「差押処分『四段構え』作戦」を展開する。
(2)自動車税の悪質な滞納者への対策の強化
自動車の差押えと引き揚げに取り組み、引き揚げた自動車はインターネット公売を活用し速やかに売却して、代金を滞納した税に充てる。
(3)財産発見のための検索の実施
差押可能な財産が判明しない滞納者に対しては、自宅や事務所への強制調査である捜索を積極的に行うなど、財産調査を徹底する。
このときの強化期間は平成30年10月~平成31年5月までの8ケ月間。
この対策をとった結果、財産差押は総数7,908人対象で内訳は給与・預貯金・生命保険等の債権7,176人、自動車548人、不動産70人、そしてその他114人という差し押さえが実施されました。
強化期間中は徹底的な調査が行なわれます。経済的だけでなくメンタルにもよくなく、このような対象にならないようにしなければいけません。
引用元:千葉県公式ページ報道発表案件「県税に関するお知らせ」
廃車しても納税義務は消えないという現実
納税できないからと車を廃車しようと考える人がいるかもしれません。しかし、この方法で納税を避けることはできません。車を保有していた過去は消せないからです。
さらに、滞納が続いている状態では廃車をすることでさえ難しくなります。
自動車税の滞納で車検はどうなる?
自動車税を滞納している状況になると、金銭面だけでなく車検についても影響があることを知っておくべきです。
実際、滞納している間は車検を受けることができません。車検を通すには、自動車税を全額払った証である自動車納税証明書が必要だからです。
車検が切れた状態で車を走行させると、国土交通省の「ナンバー自動読み取りシステム」で発見、摘発されることになります。
こうなると、道路運送車両法にて違反点数6点、6ケ月以下の懲役または30万円以下の罰金、そして30日間の免許停止という処分を受けることになってしまいます。
自動車税を滞納しているのに罰金が課せられては泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目です。
自動車税の滞納でブラックリストに載る?
税金の滞納は基本それだけで厳禁です。差し押さえまでいくと最悪の状況です。最悪というからにはブラックリストに載ってしまうのでしょうか?
答えは「いいえ」。
自動車税に関わらず、住民税や国民年金といった公金の滞納はクレジットカードの審査には無関係です。しかし、信用情報に影響しないなどと甘くみてはいけません。ローンの種類によっては審査に影響する場合があるからです。
将来の夢などある人は特に、自動車税などを滞納したためにローンを組めなかったとならないようにすべきです。
払い忘れや滞納をしたときの対策3つ
いくつものリスクがある自動車税の滞納。
では、滞納してしまったときに取れる対策はあるのでしょうか?
最悪の状況にさせないために、以下3つの対策があります。
- 事態を放置しない
払い忘れに気づいたとき、そして納付するためのお金が足りなく滞納となってしまう、こんなときは差し押さえになるまで問題を放置してはいけません。これまで解説したとおり、督促状や催告状を放置すると、どんどん状況が悪くなっていきます。
税事務所と連絡を取ってコミュニケーションをとることをおすすめします。この連絡を入れれば悪質な滞納とみなさず、柔軟に対応してもらえる可能性があります。 - 分割払いの相談をする
税事務所と連絡を取ったら、自動車税を分割で支払えないか相談することができます。分割払いは収入面や医療面などの正当な理由がある場合に限り認められますが、一括払いでは払えなくても月々払うのであれば支払いが可能になることもあります。そして、支払う意思があることを税事務所へ伝えることもできます。
ハピくるでは車の税金と分割払いの関係を解説した記事がありますので、ぜひご参考にしてください。 - 債務整理をする
この方法は自動車税に関しては少し究極の方法かもしれません。
債務処理とは、支払えなくなった借金を減額、または支払えないことを認めてもらうための手続きです。滞納金がなくなるというメリットがある代わり、手続きに費用がかかる、信用情報を扱う機関に登録されローン・クレジットカードをしばらく作れなくなるなどデメリットがあります。
ここからも滞納するということの深刻さが分かるのではないでしょうか?
新型コロナウイルスの影響による自動車税の猶予
最後に、自動車税に徴収猶予の特例制度があることを紹介しましょう。
2020年から多くの人に深刻な影響を及ぼしている新型コロナウイルス。仕事を失ったり、コロナに感染してしまったり生活が苦しくなった人が多くいます。
以下の条件に合うと、徴収猶予の特例制度を使えます。
・現金または貯金が少なく、一度に納税することが困難
・2020年2月以降で、給与や売り上げなどいずれかの月収が2019年同期と比べ概ね20%以上減少している
どちらかひとつでも当てはまれば、徴収猶予の申請をすることで最大1年間、納税期限の延長をすることができます。
条件に当てはまる人はぜひお住まいの所轄都道府県税事務所へ連絡をしてみてください。
車の税金、払い忘れと滞納まとめ
車の税金のなかでも自動車税は自分で納付というアクションを起こす必要があることから、払い忘れが起こる、他の出費を優先したり事情があって滞納してしまうことがあります。
しかし、滞納が続けば財産の一部を失う差し押さえというリスク、車検が通らないと生活に大変大きな影響が発生します。
一括納付を基本に、正当な事情がある場合は税事務所に早めに相談をしてみること、絶対に督促状や催告状を無視しないよう対応することが重要です。