「もう運転することもないので、息子に譲り渡しました。」
「娘に子どもができ車が必要だというので、大きい出費ではあるけれど250万円の自動車を買ってあげたんです。」
親が子どもに車を買ったり、子どもが親が使っていた車を譲り受ける、こんなとき、税金がかかります。皆さんはどんな税か分かりますか?
それがこの記事で取り上げる「贈与税」です。
贈与税は家族や親族の間で財産を譲り渡すときにかかります。
家族間で税金が発生するなんてと思われるかもしれませんが、この税について知らないでいると、思わぬところで支払いが生じることになってしまいます。
実は、贈与税については110万円という金額が大きなキーポイントになります。車を贈与する前に情報を知っておけば損のない譲渡をすることができます。
そこで贈与税はどんなケースで発生するのか、いくらになるのか、税額を下げる方法など、車と贈与税の関わりについて解説します。
車に関する贈与税は110万円を超えたとき
国税庁による”贈与税がかかる場合”のひとつに、「個人から財産をもらったときにかかる税金」というものがあります。
引用元:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
財産とは、お金、不動産、そして自動車を指します。これら高額なものが贈与された場合に贈与税という税金が発生します。
高額というと少し分かりにくいのですが、これは以下のようにはっきりと定められています。
贈与税がかかる金額→ 車の価格が110万円を超えるとき
贈与税がかからない 金額→ 車の価格が110万円以下のとき
極端に言えば、車の評価額が110万円を1円でも超えたなら贈与税がかかるけれど、110万円ならかからないということになります。
車の価格=評価額です。
評価額は、中古車の場合の査定(売買実例価格)または「精通者意見価格」にて決められます。減価償却を終えたとしても、マーケットで100万円の取引があれば売買実例価格=評価額が適用されるシステムになっています。
贈与税は受け取る側に課せられる
贈与とは贈る側がとる行動です。贈与税という名前から、贈った側が支払う税金と思い込みがちですがこれが間違っています。
つまり、贈与税は車を受け取る側に課せられる税金です。
例えば、父親が自分の車を娘に譲渡する場合、評価額が110万円を超える車であればこの場合、娘が贈与税を支払うことになるというわけです。
貰ったものになぜ税金が課せられるのかは簡単な理由です。車にしても不動産にしても新たな所得として捉えられ、そこに対しての課税が発生するという考えによります。
贈与税の仕組みを知らず、良かれと思って譲渡などすると、財産をもらった家族に負担がかかる可能性があることをぜひ知っておくべきでしょう。
贈与税は1年間の合計額で計算
贈与税がかかってくる金額について、気をつけるべき点があります。
対象は譲渡を受けるその時点だけではありません。その年の1月1日~12月31日が対象となっているのです。
よって、車を1台贈与された年に、お金や不動産をも贈与された場合、この合計金額が110万円を超えるのか考えなければいけません。
車の評価額が80万円だとしても、同じ年にお金を35万円貰った場合には合計115万円となり贈与税が発生するのです。
贈与税が発生するケースとは?
では、車の価格が110万円を超えるときに贈与税がかかることを踏まえた上で、どのような場合に贈与税が発生するのかみていきましょう。
- 夫婦間の車の贈与
夫婦と言えども個人同士が結婚をしたというステイタスです。従って、贈与税は発生します。ただし、お互いを扶養する関係です。生活をする上で必要と認められる範囲の車であれば贈与税の対象から外れます。逆に、高級車であったり2台目の車だったりすれば課税されます。 - 親子間の車の贈与
夫婦間同様、親子の間でも贈与税が発生します。親は子どもを扶養する義務があることから車が生活に必要な場合は贈与税は発生せず、贅沢品の場合に課税となります。 - 車の名義変更があった場合
車を購入するだけでなく、名義変更しただけでも贈与税がかかってきます。従って、名義変更と同時に対価が支払われるのであれば贈与税は発生しません。
贈与税の計算の仕方とは?
車の贈与税は以下の方法で計算します。
- 1年間に受け取った贈与の合計を計算
- 贈与の合計金額ー基礎控除額(110万円)
- 110万円を引いた額を元に贈与税を計算
贈与税を計算するには国税庁による税率が定められています。
この税率は2015年以降、一般税率と特別税率に区分されました。基礎控除(110万円)後の課税価格とその税率は以下になります。
一般税率
兄弟間、夫婦間、親から子ども(未成年)への贈与に使用されます。
200万円以下 10%(控除額なし)
300万円以下 15%(控除額10万円)
400万円以下 20%(控除額25万円)
600万円以下 30%(控除額65万円)
1,000万円以下 40%(控除額125万円)
1,500万円以下 45%(控除額175万円)
3,000万円以下 50%(控除額250万円)
3,000万円超え 55%(控除額400万円)
特別税率
祖父から孫、父から子ども(20歳以上)への贈与に使用されます。
200万円以下 10%(控除額なし)
400万円以下 15%(控除額10万円)
600万円以下 20%(控除額30万円)
1,000万円以下 30%(控除額90万円)
1,500万円以下 40%(控除額190万円)
3,000万円以下 45%(控除額265万円)
4,500万円以下 50%(控除額415万円)
4,500万円超え 55%(控除額640万円)
ここで、具体的に300万円の車を父から25歳の子どもに贈与した場合で計算してみましょう。
300万円ー110万円=190万円(これが贈与税が課される金額)
190万円x10%=19万円(特別税率から計算した金額)
19万円は控除額がありませんので、19万円が贈与税として納付する金額ということになります。
贈与税の申告の方法は?
上で述べたとおり、贈与税は受け取る側が支払うべき税金です。
車などの財産をもらった年の翌年3月15日までに申告そして納税をする必要があります。
2021年8月に110万円を超える金額の車を譲渡された場合、2022年3月15日までの申告、納税が義務となります。
申告は申告書を用意し、住まいの管轄の税務署に申請という流れです。
贈与税を減らしたい&避けたい。その方法は?
110万円を超える車の譲渡には贈与税がかかることが分かりました。課税されないようにするためには110万円以下にするに限ります。しかし、車の場合はそれが難しい場合があります。
そんなときでも贈与税を避ける、または減らす方法があります。
- 名義人を変更せずに貸す
名義変更をせずに親のままにし、子どもなどの受け取り人に当たる人はその車を借りるという状態にします。親子など家族の関係ならではできる対策です。
この場合、自動車保険に関し、所有者と使用者が違う場合でも適用されるかの確認が必須となります。 - 評価額の低い中古車を考える
110万円を超える新車でも一定期間、親が利用したり子どもに貸し出しをします。そうしている内に車の評価額が下がっていきますので、タイミングを見て譲渡します。車本体の価格が下がれば、贈与税も安くなります。
車の贈与税まとめ
身内なのに車の譲渡には贈与税が発生することが分かりました。
キーポイントは110万円超えの車にかかるということ、1年間にどれだけ財産を得たかによって税率が変わります。
受け取り側が納税する贈与税に関して知識を得ることで、非課税になる、または減額の対策が可能となります。
車を損のない譲渡にするか、そうならないかは知識が大切ですね。